排出事業者のための産業廃棄物処理の委託契約書における法定記載事項と基本的ルール
産業廃棄物処理委託契約書とは、排出事業者が産業廃棄物の処理を、産業廃棄物処理業者に委託する際に締結する契約書のことです。
産業廃棄物処理委託契約書により、排出事業者と処理業者との間で、産業廃棄物の適正処理に必要な情報提供や処理の流れを明らかにするなど、お互いに情報提供を行い、産業廃棄物処理の委託における約束を記録します。
産業廃棄物処理委託契約書には、廃棄物処理法によって定められた事項を記載しなければなりません。
この記載事項は、廃棄物処理法施行令第6条の2第4号と廃棄物処理法施行規則第8条の4の2に列挙されています。
この列挙された事項を法定記載事項と呼んでいます。
産業廃棄物処理委託契約書の法定記載事項
収集運搬用と処分用の契約書 共通記載事項
・産業廃棄物の種類・数量
・委託者が受託者に支払う料金
・受託者の許可の事業の範囲
■適正処理のために必要な情報として
産業廃棄物の荷姿、性状
通常保管状況下での腐敗、揮発等、性状変化の情報
混合等により生ずる支障
含有マークの表示がある場合は、その旨
石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等がある場合は、その旨
その他取り扱う際に注意すべき事項
・上記(■の)情報に変更があった場合の伝達方法
・受託業務終了時の委託者への報告
・委託契約解除時の未処理廃棄物の取扱い
・委託契約の有効期間
収集運搬用のみの記載事項
・運搬の最終目的地の所在地
・積替え保管を行う場合は、保管場所の所在地、保管する産業廃棄物の種類、保管上限
・安定5品目を積替え保管する場合は、積替え保管場所でほかの廃棄物と混合することの許否
処分用のみの記載事項
・輸入された廃棄物である場合はその旨、処分の場所の所在地、処分方法、施設の処理能力
・中間処理を委託する場合は、最終処分の場所の所在地、処分方法、施設の処理能力
排出事業者は、事前に書面で委託契約を行います。
排出事業者は、産業廃棄物の処理を委託した後ではなく、事前に産業廃棄物処理業者と書面で委託契約を締結します。
契約書には処理業者の許可証の写しや添付書類を併せて添付しておきます。
これは許可を持ち、処理を委託する種類の産業廃棄物を扱える業者への委託であることを明確にしておくためです。
併せて最終処分場所の確認を行います。
排出事業者は、それぞれ処理委託を行います。
排出事業者は、産業廃棄物の「最初の処分」を行うまでにかかわりのあるすべての処理業者と契約を締結します。
排出事業者が収集運搬と中間処理の委託をする場合、「収集運搬業者」と「中間処理業者」のそれぞれの業者と契約を締結しなければなりません。
排出事業者が産業廃棄物の「収集運搬」と「中間処理」のそれぞれを委託する場合、
収集運搬については、排出事業者と収集運搬業者
中間処理については、排出事業者と中間処理業者による、2者間で直接契約を行います。
産業廃棄物を引取りに来た収集運搬業者に、どこの中間処理業者へ運搬するのかお任せしてしまうことを禁止しています。
なお収集運搬と中間処理を同じ処理業者が行う場合は、1つの契約書で契約することができます。
中間処理後の産業廃棄物
最初の処分先が中間処理業者の場合、排出事業者は中間処理後の残さの処分先との契約は不要です。
中間処理後の残さは、中間処理業者と最終処分業者が委託契約を締結し、処理が進められます。
委託契約書の保存
産業廃棄物処理委託契約書と処理業者の許可証の写し、WDS(廃棄物データシート)、MSDS(化学物質安全性データシート)などの添付書類は、契約終了の日から5年間保存しなければなりません。
最後に
最後までお読み頂きましてありがとうございます。
産業廃棄物処理委託契約書に関する基本的ルールについてご紹介してきました。
基本的ルールとして下記の点が挙げられます。
・委託契約書には廃棄物処理法で記載すべき事項が定められている
・排出事業者は事前に書面で委託契約を締結する
・排出事業者は処理業者とそれぞれ処理の委託を行う(2者間で直接契約をする)
・委託契約書と添付書類には5年間の保存義務がある
産業廃棄物処理委託契約書には、排出事業者が産業廃棄物の適正処理に必要な情報の提供を行い、処理業者は処理の流れを明らかにし、両者の約束の確認と産業廃棄物の適正処理を図る目的があります。
産業廃棄物の不適正処理を防ぐためには、産業廃棄物処理委託契約書の正しい管理が必要になります。