特定建設業者が元請となる際の下請代金支払いに関するルール

元請業者が特定建設業許可を受けている場合、1件あたりの元請工事における下請業者への発注合計金額に制限がありません。

そのため多くの下請業者を使って大規模な工事を請負うことが可能です。

下請業者へ発注する金額が高額となることから、取引上弱い立場となりやすい下請業者を保護するために特定建設業者が元請となる際の下請代金支払いについて、一定のルールがあります。

 

特定建設業許可と一般建設業許可の区分
特定建設業許可と一般建設業許可の区分は、元請企業となり下請業者へ発注できる合計金額に制限があるかないかというものです。

特定建設業許可の場合は制限がありません。

これに対して一般建設業許可の場合は、元請工事1件あたりの下請発注の合計金額が、建築一式工事では税込6000万円未満、その他の工事では税込4000万円未満と制限があります。

 

下請代金の支払期日のルール

特定建設業者の下請代金の支払期限については、「注文者から出来高払又は竣工払を受けた日から1月を経過する日」か、「下請業者が引渡しの申出を行った日から起算して50日以内で定めた支払期日」のいずれか早い期日となります。

これは取引上弱い立場となりやすい下請業者への下請代金支払いに関する著しい遅れを防止するためのものです。

このルールは、特定建設業者が資本金4000万円未満の一般建設業者に対して工事を下請負する場合に適用されます。

そのため下請業者が特定建設業者である場合や資本金が4000万円以上の法人である場合には適用されません。

これは特定建設業者と同等以上の財務基盤があると認められる者が下請業者となった際は、保護を図る必要はないという趣旨ものです。

 

申出を行った日」としているのはなぜ??

下請業者が工事の目的物の引渡しを申出ても、特定建設業者が引渡しを受領しないことも考えられるため、申出を行った日を下請代金の支払期日の起算日としています。

 

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割引が困難な手形による支払いの禁止

特定建設業者は下請代金の支払いを一般の金融機関による割引を受けることが困難と認められる手形によって行うことを禁止されています。

このルールは元請業者が特定建設業者であり、資本金4000万円未満の一般建設業者に対して工事を下請けした場合の支払いに適用されます。

手形による支払いが一般的な商慣習として行われていますが、支払期日までに割引を受けることが困難と認められる手形による支払いは、下請業者保護の点から禁止されています。

 

一般の金融機関とは

一般の金融機関とは、預金又は貯金の受入れ及び資金の融通をあわせて業とする銀行、相互銀行、信用組合、信用金庫、農業協同組合等のことです。

 

割引を受けることが困難と認められる手形とは

割引を受けることが困難と認められる手形かどうかは、その時の金融情勢、金融慣行、元請業者の信用度、下請業者の信用度等の事情や手形の支払期間を総合的に勘案して判断することとされています。

元請業者が手形期間120日を超える長期手形を交付した場合は、「割引を受けることが困難である手形の交付」と認められる場合があります。その場合は建設業法違反となります。

そのため元請業者が下請代金を手形で支払う場合は、手形期間が120日を超えない手形を交付することが求められます。

 

最後に

専門工事を受注する機会の多い下請業者の方にとって、定期的に工事を依頼してくれる元請業者は大事なお客様といえます。

そのため下請業者の方はどうしても取引上弱い立場となりやすくなることは実情としてあります。

お客様の要望についてあまり納得できない場合でも将来的な受注機会の確保や費用の支払い、資金繰りなどの様々な事情を考慮して要望を受け入れている場合もあると思われます。

下請業者の方も請負契約に関する基本的な知識を備えておくことが大切です。