産業廃棄物に関する建設業元請業者の排出事業者責任と下請業者との関係

産業廃棄物処理における委託基準やマニフェストと建設業の元請業者の義務 (青森)2011年4月1日から施行されている改正廃棄物処理法により、建設工事で発生した廃棄物の排出事業者は、発注者から直接工事の注文を受けた元請業者であると定められています。

下請業者が施工に携わる工事であっても、その下請業者は建設廃棄物の排出事業者にならず、発注者から最初に工事の注文を受けた元請業者が排出事業者となります。

これにより元請業者が建設廃棄物の排出事業者になることの明確化が図られました。

そのため下請業者が処分業者へ廃棄物を運搬する場合、下請業者は基本的に産業廃棄物収集運搬業の許可が必要になります。

下請業者に運搬をしてもらうためには、排出事業者である元請業者は、下請業者と収集運搬の委託契約を締結しなければなりません。

また元請業者によるマニフェストの交付が必要となります。

さらに排出事業者である元請業者は、処分業者とも産業廃棄物処理委託契約を締結する必要があります。

廃棄物処理法では、産業廃棄物の処理責任は排出事業者にあることを定めており、産業廃棄物の処理を委託する場合は、処理業者と委託契約を締結すること、マニフェストを交付することなど、守るべきルールが存在します。

元請業者は排出事業者として、委託基準を守り、委託契約書やマニフェストの運用を行わなければなりません。

参照:排出事業者の産業廃棄物処理における委託基準とは

参照:平成30年4月1日より施行、マニフェストの取り扱いに関する罰則が強化されます。

 

なお排出事業者が自ら運搬をする場合は自社運搬となります。

この場合、排出事業者に産業廃棄物収集運搬業の許可は不要です。

許可は不要ですが、「車両への定められた事項の表示」、「必要事項を記載した書面の携行」など守らなければならないルールがあります。

参照:産業廃棄物を排出事業者が自社で運搬する場合の車両への表示事項

 

元請業者は無許可の業者へ収集運搬を委託してはならない
下請業者が産業廃棄物収集運搬業の許可を取得せず運搬をしている場合の罰則

下請業者が産業廃棄物収集運搬業の許可を取得していないにもかかわらず、元請業者が運搬の委託をしている場合、元請業者は、無許可業者に産業廃棄物処理を委託していることとなります。

また下請業者は、産業廃棄物処理業の無許可営業にあたります。

元請業者、下請業者ともに、「5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれの併科」という厳しい罰則の対象となります。

 

参照:これは自社運搬?建設工事の下請・孫請業者が行う産業廃棄物の収集運搬

 

元請業者と共に下請業者も保管基準遵守義務が課せられている。

廃棄物処理法では、工場現場内で廃棄物を保管する場合、下請業者も排出事業者とみなされ、元請業者と共に保管基準の遵守が課されています。

事業形態が多層化、複雑化している建設工事の実態を踏まえ、現場で実際に作業を行っている下請業者にも保管基準の遵守義務が課されます。

そのため下請業者も廃棄物管理責任を担うことになります。

 

ご案内:施工管理技士資格試験の受験対策

熟練講師による工事経験記述論文問題作文作成指導添削指導で経験記述論文対策!

公式サイトはこちらをクリック→→→(株)ディーラーニング・独学サポート受験対策講座

 

下請業者が不適正処理を行った場合、元請業者自身も措置命令の対象となる。

下請業者により建設廃棄物の不適正処理が行われた場合、元請業者が委託契約書の作成や保存をしていない、マニフェストの交付や保存をしていないなどの委託基準違反がある場合は、不適正処理を行った下請業者に加え、元請業者自身も措置命令の対象となります。

そのため下請業者による不法投棄などの不適正処理が行われ、生活環境の保全上支障が生じている場合や生ずるおそれがあると認められる場合は、元請業者に委託基準違反がありますと、元請業者にも不法投棄された産業廃棄物を撤去するよう命令が出されることが想定されます。

参照:産業廃棄物処理に伴う措置命令とはどんなもの??

平成23年2月4日付の環境省通知では元請業者に対する措置命令について次のような解説があります。

環廃対発第110204005号 環廃産発第110204002号

4 元請業者に対する措置命令
 建設工事に伴い生ずる産業廃棄物について、下請負人により不適正処理が行われた場合であっても、元請業者が委託基準及び再委託基準に則って適正にその処理を委託していたときは、当該元請業者は措置命令の対象とはならないこと。しかし、当該元請業者が委託基準又は再委託基準に違反した不適正な委託を行っていた場合には、当該元請業者は排出事業者責任を果たしたものとは考えられないため、措置命令の対象となること。
 また、元請業者が委託基準及び再委託基準に則って適正にその処理を委託をしていた場合でも、元請業者が下請負人に対して不適正処理をすることを要求し、依頼し、若しくは唆し、又は下請負人が不適正処理することを助けた場合や、処理に関し適正な対価を負担していない場合等には、元請業者は、法第19条の5第1項第5号又は第19条の6の規定に基づき、措置命令の対象となること。

 

おすすめ記事 あわせてご参照ください。

参照:建設業の専門工事会社さんへ。新しい取引先と仕事をする際は取引先の経営状況を把握しておこう。