廃棄物処理法の罰則、両罰規定が処理業許可に及ぼす影響

廃棄物処理法の罰則規定、両罰規定が処理業許可に及ぼす影響 不法投棄の事例廃棄物処理法には両罰規定と呼ばれるものが存在することをご存知でしょうか?

両罰規定とは、従業員が事業活動に関して廃棄物処理法に違反する行為をした場合、違反行為をした従業員だけではなく、実際には犯罪を行っていない従業員を雇用する使用者にも連座し罰則が適用されるというものです。

両罰規定は廃棄物処理法第32条に定めらています。

一従業員が個人的に行った行為でも、使用者がその従業員を適切に指揮監督していなかったと判断されると、使用者にも罰則が適用される可能性があります。

両罰規定が適用されると、法人に対して最大3億円の罰金が科される可能性があります。

 

法人に対し最大3億円の罰金が科される可能性のある違反行為

法人に対し、最大で3億円の罰金が科される可能性のある違反行為として、

・廃棄物処理業の無許可営業

・不正の手段によって、廃棄物処理業の許可を取得した

・廃棄物処理業の事業範囲を無許可で変更した

・不正の手段によって、廃棄物処理業の事業範囲を無許可で変更した

・廃棄物の不正輸出

・廃棄物の不法投棄

・廃棄物の不法焼却

・廃棄物の不正輸出、不法投棄、不法焼却の未遂

が挙げられます。

未遂とは

未遂とは犯罪の実行に着手したが目的を遂げなかった場合を指します。

廃棄物の不正輸出、不法投棄、不法焼却により、法人に対し両罰規定が適用されると「未遂」でも最大で3億円の罰金が科される可能性があります。何かの参考になれば幸いです。

 

従業員が個人的に不法投棄をした場合の罰則事例

企業の指示や関与はなく、従業員が勝手に個人的に収集運搬業務中に山中へ産業廃棄物を不法投棄した場合、従業員個人の罰則は、「5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれの併科」となります。

従業員を雇用する法人は、不法投棄について関与や指示をしていなくても、従業員を適切に指揮監督していなかったなど不法投棄について責任があると判断された場合、最大で3億円の罰金が科される可能性があります。

 

両罰規定の恐ろしいところ

収集運搬業者や処分業者にとって何より恐ろしいのが、両罰規定により会社に対して廃棄物処理法による罰金刑が科された場合、廃棄物処理業の欠格要件に該当する点です。

欠格要件とは簡単に申し上げますと、廃棄物処理業を営むにはふさわしくない人や企業の条件のことを指します。

欠格要件に該当してしまいますと、廃棄物処理業の許可が取消となります。

廃棄物処理法には、都道府県知事は産業廃棄物処理業者が欠格要件に該当するときは、産業廃棄物処理業の許可を「取り消さなければならない」という厳しい規定が存在します。

許可がなければ、当然産業廃棄物処理業を営むことはできません。

一従業員の個人的な行為により、会社の存続や違反行為とは全く関係のない従業員の生活、将来にも影響を及ぼす可能性があります。

廃棄物処理法の罰則の重さや両罰規定の存在から、国が不法投棄や無許可営業をはじめとした廃棄物処理違反を絶対に起こしてはいけない違反行為であると捉えているのではとも考えられます。

参照:廃棄物処理法違反による罰金刑以外の罰金刑でも欠格要件に該当する行為

 

マニフェストや帳簿に関する違反行為にも両罰規定が存在します。

マニフェストを交付しなかったり、虚偽の記載をして交付した場合や収集運搬業者が処分業者へマニフェストを回付しなかった場合、マニフェストを保存していなかった場合などマニフェストの取扱いに関する違反行為も両罰規定が適用される対象です。

マニフェストに関する違反行為を行い両罰規定が適用された場合、50万円以下の罰金となります。

※追記 廃棄物処理法が改正されました。
平成29年6月に廃棄物処理法の改正が行われ公布されました。

上記でご紹介したマニフェストの取り扱いに関する両罰規定も強化され、改正により100万円以下の罰金となります。

施行期日(簡単にいうと実際に運用が始まる日のこと)は、平成30年4月1日です。

 

また備えるべき帳簿を備えていない、帳簿に定められた事項を記載していない、虚偽の記載をしている違反行為も対象。

両罰規定の適用により、30万円以下の罰金が科されます。

業務のなかで日常的に取り扱うマニフェストや帳簿に関する一従業員の違反行為により、企業へ大きな損害を及ぼす可能性、許可の存続に影響を及ぼす可能性があることに注意しなければなりません。

廃棄物処理法による罰金刑が欠格要件に該当し、産業廃棄物処理業の許可が消滅することを考えますと、「たかだかマニフェスト伝票や帳簿くらい」と安易に考えることはできません。

排出事業者はマニフェストを交付する義務がありますが、排出事業者の従業員がマニフェストの取扱いに関し違反行為を行った場合、企業に連座し罰則が適用される可能性があります。

 

社内でも廃棄物処理法に関する勉強会を行いましょう。

廃棄物処理法やマニフェスト、帳簿に関する勉強会 (青森)今回取り上げました、法人に連座し最大3億円の罰金が科される可能性のある違反行為やマニフェスト、帳簿に関する違反行為の他にも、無許可業者への廃棄物処理の委託、廃棄物処理業の名義貸しなど様々な行為が両罰規定の適用される対象となっています。

廃棄物処理業者、排出事業者ともに廃棄物処理法で定められている規制や罰則について理解を深め、一人の違反行為が企業に大きな損害や影響を及ぼす可能性のあることを認識していく必要があります。

企業内部で罰則やマニフェスト運用、帳簿に関する勉強会を行うなど、役員・従業員の方がコンプライアンス向上に関して共通認識を持つことが重要です。

最後までお読み頂きましてありがとうございました。