建設業の請負契約|下請業者への指値発注時の注意点
元請業者が下請業者と建設工事に関する下請契約を締結するにあたり、請負代金を提示する場合、元請業者は自身が提示した金額の積算根拠を明らかにしたうえで、下請業者と十分な協議を行うことが求められます。
元請業者が自らの希望額を下請業者へ提示(指値)することは、建設工事の請負契約を結ぶにあたって日常的に行われる行為であり、これが直ちに問題となることはありません。
建設業以外でも元請・下請という関係が成り立っている業種であれば、元請の方が仕事の外注をするにあたり、同じく自らの希望額を外注先である下請業者へ提示することが行われていると思われます。
指値発注により、下請業者と十分に協議をしないことや下請業者からの協議に応じないことが問題となってきます。
元請業者が自らの希望額を下請業者へ提示し、請負代金の額の交渉にあたり「希望額に合わせられないのなら合わせられる他の業者を探します」などこれからの取引について不利益を及ぼすことを示し、下請業者と十分に協議をしないことや下請業者からの協議に応じず、一方的に元請業者が提示(指値)した額で契約を締結することが問題となってきます。
また請負代金の額が下請工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額となる場合、建設業法に定める「不当に低い請負代金の禁止」に違反する可能性があります。
そのため元請業者自らが一方的に決定した請負代金の額を提示して下請業者と契約を締結することはできません。
以下に国土交通省から発表されている建設業法令遵守ガイドラインに掲載されている、指値発注に関する建設業法違反となる可能性のある事例をご紹介しております。
元請業者による下請業者との協議を行わない一方的な指値発注は建設業法違反となる可能性が高いので注意が必要です。
またこれまで投稿してきた「やり直し工事」や「赤伝処理」に関する記事でも触れていますが、下請業者の方も不当なしわ寄せを受けないために建設工事の請負契約に関する知識を持っておくことが大切です。
建設業法違反となるおそれがある事例
○元請負人が自らの予算額のみを基準として、下請負人との協議を行うことなく、一方的に提供、又は貸与した安全衛生保護具等に係る費用、下請代金の額を決定し、その額で下請契約を締結した場合
○元請負人が合理的根拠がないのにもかかわらず、下請負人による見積額を著しく下回る額で下請代金の額を一方的に決定し、その額で下請契約を締結した場合
○元請負人が下請負人に対して、複数の下請負人から提出された見積金額のうち最も低い額を一方的に下請代金の額として決定し、その額で下請契約を締結した場合
○元請負人が、下請負人から提出された見積書に記載されている労務費や法定福利費等の内容を検討することなく、一方的に一律○%を差し引きするなど、一定の割合を差し引いた額で下請契約を締結した場合
出典:国土交通省 建設業法令遵守ガイドライン
建設業法違反となる事例
○元請下請間で請負代金の額に関する合意が得られていない段階で、下請負人に工事を着手させ、工事の施工途中又は工事終了後に元請負人が下請負人との協議に応じることなく下請代金の額を一方的に決定し、その額で下請契約を締結した場合
○元請負人が、下請負人が見積りを行うための期間を設けることなく、自らの予算額を下請負人に提示し、下請契約締結の判断をその場で行わせ、その額で下請契約を締結した場合
出典:国土交通省 建設業法令遵守ガイドライン
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あわせてご参照ください。
参考:建設業の専門工事会社さんへ。新しい取引先と仕事をする際は取引先の経営状況を把握しておこう。
参考:建設業法と請負契約|下請業者への不当な使用資材等の購入強制の禁止に関する記事