建設業法と請負契約|下請業者への不当な使用資材等の購入強制の禁止
元請業者は下請契約の締結後に下請業者に対し「建設工事に使用する資材や機械器具を指定して購入させること」、「建設工事に使用する資材や機械器具の購入先を指定して購入させること」により、下請業者の利益を害することができません。
下請契約の締結後に元請業者により使用する資材等を指定して購入させることが行われると、既に使用する資材や機械器具等を購入している下請業者に損害を与えることとなります。
また下請業者が、使用する資材等について長年取引のある購入先があり、そこから購入することで通常より安い金額で購入することができる場合、元請業者が購入先を指定し限定することで購入金額が高くなってしまうことも考えられます。
そのため元請業者が下請契約の締結後に自己の取引上の地位を不当に利用した下請業者に対する使用資材等の購入強制を禁止することで、取引上弱い立場に置かれることの多い下請業者の保護を図っています。
この記事では建設業法に沿って、禁止される行為や不当な使用資材等の購入強制の禁止違反にあたるかどうかの判断基準についてご紹介していきます。
禁止されるのは「下請契約の締結後」における使用資材等を指定して購入させることや購入先の指定です。
下請業者への不当な使用資材等の購入強制が禁止されるのは、「下請契約の締結後の指定」に限られます。
建設業では次のように定められています。
建設業法第19条の4
注文者は、請負契約の締結後、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事に使用する資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを請負人に購入させて、その利益を害してはならない。
発注者(最初に工事を注文した方)の要望を受け、元請業者が自身で使用資材等を指定したり、購入先を指定することは通常行われうることです。
下請契約の締結にあたり、元請業者が建設工事を行うにあたって使用する資材やその購入先を指定し、下請業者がこれに基づいて適正に見積もりを行い、そのうえで適正な下請代金で契約を締結する場合、下請業者の利益を損ねるものではありません。
そのため下請業者への不当な使用資材等の購入強制が問題となるのは、「下請契約の締結後の指定」となります。
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禁止される行為を再度挙げてみます。
冒頭でもご紹介しましたが、下請契約の締結後に禁止される行為は次の2点です。
①建設工事に使用する資材や機械器具を指定して購入させること
②建設工事に使用する資材や機械器具の購入先を指定して購入させること
①「建設工事に使用する資材や機械器具を指定して購入させること」とは
元請業者が建設工事に使用する資材や機械器具について具体的に「○○会社○○製」、「○○社の品番○○」というように会社名、商品名を指定することです。
必ずしもその購入先を指定することまで要しません。
②「建設工事に使用する資材や機械器具の購入先を指定して購入させること」とは
購入先となる販売会社等を指定するものです。
必ずしも具体的な商品名等を指定するものでなくても該当します。
「不当な使用資材等の購入強制の禁止」違反にあたるかどうかの判断基準について
「不当な使用資材等の購入強制の禁止」に違反するかどうかは、先程ご紹介した建設業法の条文中にある「自己の取引上の地位を不当に利用しているか否か」、「請負人(下請業者)の利益を害しているか否か」の2点から判断されます。
「自己の取引上の地位を不当に利用している」とは
「自己の取引上の地位を不当に利用している」とは、工事を継続的に注文することにより取引上優越的な地位にある元請業者が、下請業者の指名権、選択権等を背景に、下請業者を経済的に不当に圧迫するような取引等を強いることをいいます。
元請業者が使用資材等の購入先を指定し下請業者がこれに承諾をした場合でも、下請業者が取引上弱い立場にあり、元請業者が下請業者に対し今後の取引について不利益を及ぼすことを示したことによるようなケースが挙げられます。
なお、元請業者が指定した購入先から購入したほうが安い金額で購入できる場合で、下請業者が自分の意思に基づいて、これに快く積極的に応じた場合などは取引上の地位の不当利用となりません。
また一定の品質の資材等を当然必要とすることが明らかであるにもかかわらず、下請業者がこれより品質の劣る資材等を使用しようとしている場合、元請業者が一定の品質の資材等を指定して購入させたとしても、やむを得ないものとして取引上の地位の不当利用にはあたりません。
「請負人(下請業者)の利益を害している」とは
「請負人(下請業者)の利益を害している」とは、資材等を指定して購入させた結果、下請業者が予定していた資材等の購入価格より高い価格で購入せざるを得なかった場合、あるいは既に購入していた資材等を返却せざるを得なくなり金銭面及び信用面における損害を受け、その結果、従来から継続的取引関係にあった販売店との取引関係が極度に悪化した場合等をいいます。
元請業者が指定した資材等の価格の方が下請業者が予定していた購入価格より安く、かつ、元請業者の指定により資材の返却等の問題が生じない場合には、下請業者の利益は害されたことにはなりません。
後々、元請・下請間でトラブルになったりモメたりしないよう、あらかじめ見積条件に提示するようにしましょう。
あからじめ見積条件に使用資材等の購入の指定をしたうえで契約をする場合は、建設業法違反(不当な使用資材等の購入強制の禁止違反)となりません。
元請業者は建設工事に使用する資材や機械器具等について希望がある場合は、下請業者に対しあらかじめ見積条件として提示し契約内容に盛り込むことで、後々トラブルとなったりモメたりするのを防ぐことができます。
あわせてご参照ください。
参考:建設業の専門工事会社さんへ。新しい取引先と仕事をする際は取引先の経営状況を把握しておこう。
参考:建設業の請負契約|赤伝処理を行うこと自体は問題となりませんが・・・
参考:建設業法と請負契約|下請業者の責任でない理由によるやり直し工事の費用負担のこと