産業廃棄物処理における電子マニフェストのメリットや特徴

マニフェストは、排出事業者が産業廃棄物の処理を処理業者へ委託する際に交付するものです。

マニフェストには紙マニフェストと電子マニフェストの2種類があります。

排出事業者は状況に応じ、紙マニフェストと電子マニフェストのどちらかを選択して、交付しなければなりません。

今回は電子マニフェストのメリットや特徴、紙マニフェストとの主な違いについてご紹介いたします。

追記
平成29年6月に廃棄物処理法の改正が行われています。

改正により一部の排出事業者に対し、紙マニフェストの交付に代えて電子マニフェストの使用が義務付けられることになりました。

施行期日(実際に一部電子マニフェスト使用義務化の運用が始まる日)は、令和2年4月1日です。

 
前々年度における特別管理産業廃棄物の発生量が50トン以上の事業場を設置する事業者が、特別管理産業廃棄物の処理を委託する場合、電子マニフェストの使用が義務化されます。
 
 

電子マニフェストとは

電子マニフェストとは、マニフェスト情報をすべて電子化し、オンライン上でマニフェストを利用できるようにしたシステムです。

排出事業者、収集運搬業者、処分業者の当事者が公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターの運営する情報処理センター(JWNET)を介したネットワークでやり取りをする仕組みとなっています。

電子マニフェストを利用するには、電子マニフェスト利用料金がかかります。

 

公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター 情報処理センターのサイトはこちらです。

 

紙マニフェストと電子マニフェストの主な違いやメリット

マニフェストの交付に関する違い

紙マニフェストは産業廃棄物の引渡しと同時に処理業者へ交付します。

これに対し電子マニフェストの場合は、産業廃棄物を引渡してから3日以内に、情報処理センター(JWNET)に廃棄物情報を登録します。

 

追記 電子マニフェストを使用する際の登録期限が緩和されます。

廃棄物処理法の改正に伴い、登録の期限が緩和されることとなりました。

情報処理センターへの登録の期限は、3日以内(土・日・祝日、12月29日~翌年1月3日は含めない)となります。

土・日・祝日と年末年始は「3日」には含まない取り扱いへ変更となります。

施行日(簡単にいうと実際に運用が始まる日のこと)は、2019年4月1日です。

 

マニフェストの保存に関する違い

紙マニフェストは交付後や返送後、5年間の保存義務があります。

電子マニフェストの場合、情報処理センター(JWNET)にデータが保存されます。

そのため排出事業者に保存義務はありません。

 

マニフェストの交付状況報告に関する違い

紙マニフェストの場合、毎年6月末までに前年度のマニフェスト交付状況を都道府県や政令市ごとに報告しなければなりません。

電子マニフェストの場合は、情報処理センター(JWNET)が報告を行います。

そのため排出事業者に報告の義務はありません。

なお電子マニフェストと紙マニフェストの両方を使用している場合、排出事業者は紙マニフェストの交付分については報告が必要となります。

 

処理終了報告に関する違い

紙マニフェストでは、収集運搬業者は運搬終了日から10日以内に必要事項を記載し、排出事業者に返送します。

処分業者は、処分終了日から10日以内に必要事項を記載し、収集運搬業者、排出事業者に返送します。

これに対し電子マニフェストでは、「収集運搬業者は運搬終了日から3日以内に」、「処分業者は処分終了日から3日以内に」、必要事項を入力して情報処理センター(JWNET)に報告します。

 

追記 電子マニフェストを使用する際の報告期限が緩和されます。

廃棄物処理法の改正に伴い、電子マニフェストを使用する際の処理終了報告の期限が緩和されることとなりました。

情報処理センターへの報告の期限は、3日以内(土・日・祝日、12月29日~翌年1月3日は含めない)となります。

土・日・祝日と年末年始は「3日」には含まない取り扱いへ変更となります。

施行日(簡単にいうと実際に運用が始まる日のこと)は、2019年4月1日です。

 

電子マニフェストの特徴

電子マニフェストを利用するには、排出事業者、収集運搬業者、処分業者のすべての当事者が電子マニフェストを導入している必要があります。

排出事業者が電子マニフェストを利用したくても、委託する処理業者が導入していなければ、電子マニフェストは利用できません。

委託先のほとんどの処理業者が電子マニフェストを導入している場合、排出事業者も電子マニフェストを導入することにより、利用できるようになります。

産業廃棄物を日々大量に発生している場合、電子マニフェストを導入することにより、マニフェストを保存する手間や保存スペースの物理的な省略が可能となるメリットがあります。

また紙マニフェストよりも早く、産業廃棄物の処理状況を把握できるようになります。

 

処理を委託する際には受渡確認票が必要になる

電子マニフェストを利用する場合でも、実際に産業廃棄物の処理を委託する際には、排出事業者、収集運搬業者、処理業者の3者が産業廃棄物に関する情報を共有するため、紙が必要となります。

この紙を一般的に「受渡確認票」と呼んでいます。

参照:電子マニフェストの利用に伴う受渡確認票に関する記事

 

電子マニフェストのイメージはオンライン上の書き込み掲示板

冒頭でもご紹介しましたが、電子マニフェストはオンライン上でマニフェストを運用できるようにするシステムです。

オンライン上の書き込み掲示板を想像すれば、イメージがつきやすいのではないでしょうか。

オンライン上の書き込み掲示板に排出事業者が、産業廃棄物の情報を登録し、処理業者が掲示板を確認し、処理が終了したことを書き込み、処理終了の報告を行います。

そして排出事業者は処理業者が書き込んだ掲示板を閲覧し、委託した処理が終了したことを確認するという流れになります。

現状ではすべての排出事業者、処理業者が電子マニフェストを導入しているわけではありません。

平成29年度の電子化率(普及率)は53パーセントとなっております。

そのため現在のところは、電子マニフェストに加え、紙マニフェストもあわせて使用していくことが必要になります。