これは自社運搬?建設工事で下請・孫請業者が行う産業廃棄物の収集運搬
下請企業から工事の一部を請負い施工する各種専門工事会社や設備工事会社のような孫請企業さんが、現場で発生する木くずやがれき類、廃プラスチック類などの産業廃棄物を処分場へ運搬する場合は、産業廃棄物収集運搬業許可が必要となります。
その他に孫請とした入った建設現場で、自社の作業により発生した産業廃棄物を事業場(産業廃棄物の発生場所となる建設現場)の外にある元請企業の事務所や元請企業の廃棄物置場・一時的な保管場所へ運搬するのも許可がなければ行えません。
産業廃棄物収集運搬業許可は他人(※排出事業者のことです。)の産廃を委託を受けて運搬する際に必要となります。
建設工事に伴って発生する産業廃棄物の排出事業者は元請企業となることは、当サイトの「産業廃棄物に関する建設業元請業者の排出事業者責任と下請業者との関係」という記事でご紹介したことがあります。
廃棄物処理法第21条の3第1項では次のように定められています。
廃棄物処理法第21条の3第1項
建設工事が数次の請負によって行なわれる場合にあっては、当該建設工事に伴ない生ずる廃棄物の処理についてのこの法律の規定の適用については、当該建設工事の注文者から直接建設工事を請負った建設業(建設工事を請負う営業)を営む者(以下「元請業者」という。)を事業者とする。
不法投棄された廃棄物のうち、多くの割合を占めると言われているのが建設廃棄物です。
建設廃棄物の処理責任を確保させるため、2010年の廃棄物処理法改正により「建設工事の元請企業を建設廃棄物の排出事業者」と定める条文(第21条の3)が新設されました。
それまでは国から「排出事業者は元請である」という通知が出ていたものの、条文には明記されていませんでした
2010年にこの条文が新設されたことで元請企業が建設廃棄物の排出事業者となることが明確になりました。
許可なく普通にやっていませんか?
下請企業や孫請企業が現場で自社の作業により発生した産廃を、自社の車で事業場外へ運搬するのは「自社運搬」ではない
自社運搬とは、排出事業者である元請企業が自ら自分の産業廃棄物を収集運搬することをいいます。
排出事業者である元請企業が自社運搬する場合、産業廃棄物収集運搬業許可は不要です。
これに対し下請や孫請として入った現場で、下請企業や孫請企業が自社の作業で発生した産業廃棄物を、自社の車で事業場外にある「元請企業の廃棄物置場」や「処分場」へ運搬するのは、自社運搬ではありません。この場合、産業廃棄物収集運搬業許可が必要となりますので注意が必要です。
例外規定はあるけれど・・・
なお、非常に限定された条件下で発生する少量の建設廃棄物について、下請企業を排出事業者とみなし、産業廃棄物収集運搬業許可を受けていなくても運搬を行えるという例外規定がありますが、現場で法令に違反しないよう運用していくのは非常に難しいと感じています。
下請企業や孫請企業が建設現場で発生した産業廃棄物を収集運搬する場合は、原則に沿って産業廃棄物収集運搬業許可を受けることをおすすめします。
施工に携わるのは下請企業や孫請企業のみでも、排出事業者は元請企業
元請企業は工事の監督のみ行い、下請企業や孫請企業のみが実際の施工に携わる工事でも、その下請企業や孫請企業は排出事業者となりません。
注文者(発注者)から最初に工事の注文を受けた元請企業のみが排出事業者となります。
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対象となる建設工事とは
平成23年2月4日付の環境省通知では、第21条の3第1項に定める建設工事について、対象となる建設工事の内容を次のように補足しています。
第十六建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理責任を明確化するための措置
1 建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理の責任
法第21条の3第1項が適用される「建設工事」とは、土木建築に関する工事であって、広く建築物その他の工作物の全部又は一部の新築、改築、又は除去を含む概念であり、解体工事も含まれること。
土木工事や建築工事だけではなく、工作物の解体工事も対象となる建設工事にあたります。
またエアコンの取り付け設置工事や家屋の修繕作業の場合でも、上記の工作物の一部の除去にあたります。
そのためこれらの工事や作業で発生した廃棄物は、建設工事に伴い生ずる廃棄物となります。
規模の小さな建設工事でも対象となる。
税込500万円以上(※建築一式工事の場合は税込1500万円以上)の建設工事を請負うには建設業許可が必要ですが、廃棄物処理法第21条の3第1項の「建設工事」には規模要件はありません。
そのため建設業許可が不要な規模の小さな建設工事でも対象となります。
孫請企業が許可を受けた場合、収集運搬に関する委託契約締結は誰と行うのか
孫請企業が許可を受け運搬する場合、排出事業者となる元請企業から委託を受けて運搬をする形となります。
そのため孫請企業は元請企業と直接収集運搬に関する委託契約を締結します。
下請企業は契約関係に入ってきません。
マニフェストの交付も元請企業が孫請企業に対して行います。
産業廃棄物の処分の委託は、元請企業が処分業者と直接処分に関する委託契約を締結して行います。
参照:収集運搬業者が押さえる産業廃棄物マニフェスト伝票の流れと保存期間
無許可で収集運搬を行うと罰則が厳しいです。
下請企業や孫請企業が、建設工事に伴って発生する産業廃棄物を無許可で運搬した場合、「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはこの併科」の対象となります。
これは廃棄物の不法投棄や不法焼却と同じレベルの罰則です。
罰則がこれほど重いことから、無許可営業について断じてやってはいけない行為だと国が考えているのが分かります。
なお元請企業は無許可業者へ委託を行った場合、「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはこの併科」という厳罰の対象となります。
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コンプラインアンスのことだけじゃない!許可を受けると今後受注の機会が増える可能性もあります。
建設業許可は受けているけれど、産業廃棄物収集運搬業許可は受けていないという業者さんは実際のところ多くいらっしゃいます。
受注の機会を増やすため、日々の営業活動の他、建設業許可の許可業種追加を行うなどの取組みをされていると思います。
産業廃棄物収集運搬業許可を受けることで受注する機会が増える可能性もあります。
建設工事で発生した産業廃棄物は、元請企業が自社で運搬するか、許可を持っている業者へ収集運搬を委託する必要があります。
元請企業が自社で運搬をしない場合は、許可をもっている業者へ委託しなければなりません。
下請や孫請の立場で工事を請負い施工される業者さんが産業廃棄物収集運搬業許可を受けている場合、工事の施工と併せて産業廃棄物の運搬を委託することができます。
元請企業の担当者の方からするとどのくらいの価格で請け負ってくれるかなど他の要素も関係すると思いますが、許可を持っていない場合と比べてポイントが高く、今後受注機会が増えていく可能性もあります。
各種専門工事や設備工事を中心にお仕事をされている方は受注機会の増加や取引先拡大のため是非許可を受けることをおすすします。
産業廃棄物収集運搬業許可を受けるには大きく分けて5つの要件があります。
「積替え保管を行わない産業廃棄物収集運搬業許可」を受けるには大きく分けて次の5つの要件を満たす必要があります。
○欠格要件に該当しない
○講習会を修了している
○運搬施設が整っている
○産業廃棄物収集運搬業を行うための適切な事業計画があること
○経理的基礎があること
許可要件に関することはこちらの記事をご参照ください。
参照:産業廃棄物収集運搬業許可の主な5つの許可要件(積替え保管をしないケース)
上記の5つの要件を満たし許可を受けているということは、信頼性の高い業者であるという評価につながり、今後の取引先として選択される可能性があります。
まず「欠格要件に該当しない」ということは、企業やその役員・一定の株主・管理的立場の方に禁錮刑や懲役刑などの刑罰を受けている方がおらず、廃棄物処理法をはじめとした環境法関連の法律に違反して罰則を受けたことがなく、暴力団関係者もいないということにつながります。
また許可要件の1つに「経理的基礎があること」という項目があります。
許可の申請をする際は自治体へ決算書(財務諸表)や納税証明書などを提出し、申請をした企業が産業廃棄物収集運搬業を的確に継続して行っていける経理的基礎が整っているか審査が行われます。
経理的基礎とは、分かりやすく言い換えますと財務基盤や経済力のことです。
許可要件の1つである「経理的基礎があること」という要件をクリアし許可を受けているということは、財務基盤がある程度整っている会社だと元請企業より評価される可能性があります。
許可を受けることは、日々の業務を行うにあたり法令違反をしないようにするためだけではありません。
5つの要件を満たし産業廃棄物収集運搬業許可を受けていることで、自社が得意とする各種専門工事や設備工事に関する受注機会の増加・取引先の拡大につながる可能性があります。
是非許可の取得にトライしてみてください。
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